3事例に学ぶ 価値転換・価値の再定義ー共感と意味で選ばれる商品づくりとマーケティング

公開日:2026年03月23日最新更新日:2026年03月23日堀内香枝

今回は、価値が低いとみなされていたもの(資源、在庫、廃棄物)に命を吹き込み、お客さまに喜ばれる価値に変換することに成功している3事例から、マーケティング・商品づくりのヒントを学びたいと思います。

低利用資源の価値転換(食品)

一つ目は、島根県の県魚であるトビウオ(飛魚)を原材料とした商品、トビウオとゴマのソフトふりかけ『あごごま』です。
製造者は、株式会社SOL JAPAN(ソル ジャパン|代表取締役 田中 真一氏|島根県松江市宍道町)で、前身は「田中屋鮮魚店」です。

写真:筆者撮影

トビウオは“あごだし”で有名ですよね。
しかし、トビウオの活用は、出汁や練り物の原料など用途が限られていました。

用途が限られる魚は“低利用魚”(※)に分類され、そうすると、大量に獲れたときは、安価に取り引きされてしまい、漁師さんの収入にも影響が出てしまいます。

(※)低利用魚とは(魚食普及推進センターHPより)
・低利用魚:価値がない・価値が低い
・未利用魚:利用されない
・混獲魚(コンカクギョ):目的の魚に混じる
・雑魚(ざこ・じゃこ):雑多に獲れる
・マイナー魚、インディーズフィッシュ:メジャーでない
等、呼ばれ方含めて定義は曖昧です。「低未利用魚」等、さらにミックスされていたりします。
漁獲量(少ないor獲れすぎ)、手間(コストに見合わないサイズ、トゲなど)、知名度や知識(知られていない魚・さばく知識がない)等々の理由で、ある地域では高級でも、他地域では食べ方がわからない等が未利用魚・低利用魚と呼ばれる傾向があります。

そこで、トビウオの漁価を高める取り組みとして未来の地元水産業活性化に繋げたいという想いから、ふりかけ『あごごま』が開発されました。

本商品の優れている点は「低利用魚という供給側の課題」を、「消費者にとっての価値」に翻訳している点にあります。

トビウオは“あごだし”としての認知はあるものの、日常的に使いやすい形ではありませんでした。

”ふりかけ”という手軽で汎用性の高い商品形態に転換することで、「手軽に使える」「栄養価が高い」「地域性を感じられる」といった複数の価値を付加しています。
さらに、「低利用資源の活用」「漁師支援」といったストーリー性が加わることで、単なる食品ではなく“共感で選ばれる商品”へと昇華しています。

つまり、素材の価値から「使い方」の価値へ価値を転換し、「意味づけ」を再設計することで、新たな需要を創出した好例といえるでしょう。

ふりかけ『あごごま』は、トビウオの骨まで丸ごと粉砕して使用していて、「おおさじ1杯でカルシウム72㎎」摂れるそうようですよ。

在庫の価値再編集(アパレル)

2つ目は、スタイリスト小沢宏氏が手掛けるファッションのセレクトショップ「EDISTORIAL STORE(エディストリアル ストア)」(長野県上田市)です。

注目点は、①新古品の服の二次流通という商流と、②スタイリストならではの審美眼でメーカー(ブランド)の倉庫に眠っているデッドストック(経年在庫)を買い付け、「ライブストック(LIVE STOCK)」として価値を再定義し新しい装いを提案している点です。

写真:筆者撮影

エディストリアルストアではすべての商品をカテゴリー分けしています。
同ブランドのインスタグラムより)

<カテゴリー区分>
・LIVE STOCK→経年在庫
・B GRADE→B品
・SAMPLE→サンプル
・USED→古着
・MASH-UP→マッシュアップ

■ LIVE STOCKとは
未使用の商品のまま、倉庫の奥底に眠り、日の目を見ることがなくなってしまったブランドの「経年在庫」『DEADSTOCK』に、小沢宏氏が再びフォーカスを当てることで新しい命を吹き込み、生き返えらせることで、『DEAD』を⇨『LIVE』にする商品。そんな意味で作った造語。『LIVE STOCK』とは定義であり理念であり、分類でもあります。
同ブランドのホームページより)

■MASH-UPとは
小沢宏氏が独自にひと手間を加えて再編集したアイテムのこと。
例えば、「Tシャツに+コサージュをひと手間加えて→再編集したTシャツを販売する」「写真のように、シャツに哲学を刺しゅうする」などし、個性のある価値を付加することです。
同ブランドのインスタグラムおよび筆者スタッフインタビューより)

(同ブランドのインスタグラムより)

元々あるアイテムをスタイリストらしいワンアイディアでもっと素敵なモノに作り変えるシリーズを『MASH-UP』とカテゴライズしています。

写真はマッシュアップの例として、エディストリアルストアのフィロソフィーである、

EDISTORIAL

STORY

EDISTORIAL STORE

を刺繍したシリーズです。
元々のシャツも充分魅力的ですが、そこに刺繍をすることで、更にパワフルに個性的に輝くアイテムに作り変えています。

B品とは
一般的に、未使用の商品のまま、糸のほつれや、傷、シミなどにより規格外になった訳あり商品。
SAMPLE(サンプル)とは
一般的に、ブランドのデザイナーやメーカーが商品の制作段階で生産する少量の試作品のこと。
■古着とは
使用済みという意味。

本ビジネスは「価値が下がった商品を、別の文脈で再編集し直している点」がポイントです。

通常、デッドストックやB品、サンプル品は“余剰”や“訳あり”として価値が低く見られがちですが、エディストリアルストアではそれらを「LIVE STOCK」や「MASH-UP」といった独自のカテゴリーで再定義することで、ネガティブな“DEAD”を→ポジティブな “LIVE”へ意味を転換しています。

さらに、スタイリストの審美眼という編集力が加わることで、「選ばれた理由のある商品」「一点モノ価値」として認識され、単なる在庫処分ではなく“新しいファッション提案”として成立しています。

つまり本事例は、「商品そのものを変えるのではなく、見せ方・意味づけ・文脈を変えることで価値を再創造する」というマーケティングの重要な示唆を含んでいるといえるでしょう。

再生と関係性の価値創造(文具)

3つ目は、回収したボトルなどの海洋プラスチックごみをリサイクルした材料を使用してつくられたノック式ボールペン『JETSTREAM TECYCLED OCEAN PLASTIC(ジェットストリーム 海洋プラスチック)』(※1)(三菱鉛筆株式会社)です。

日本国内で回収された海洋プラスチックごみと、使い捨てコンタクトレンズの空ケース(※2)からリサイクルした“ポストコンシューマープラスチック(※3)”からボールペンの軸がつくられています。

(※1)『ジェットストリーム 海洋プラスチック』は、
文具業界で初めてエコマーク商品類型No.164「海洋プラスチックごみを再生利用した製品」(※4)の認定を取得した、環境に配慮したボールペンです。
三菱鉛筆株式会社プレスリリースより)

(※4)No.164「海洋プラスチックごみ、漁業系プラスチック廃棄物を再生利用した製品 Version1」基準は、公益財団法人日本環境協会が運営するエコマークから、2021年2月1日付で制定・認定を開始した、海洋プラスチックごみ対策に特化した世界で初めての環境ラベル(ISO14024に準拠したタイプⅠ環境ラベル)の認定基準です。
日本環境協会ホームページ、HOYA株式会社プレスリリースより)

(※2)使用されている素材のコンタクトレンズの空ケースは、コンタクトレンズ専門店「アイシティ」(HOYA株式会社 アイケアカンパニー)が行っている「アイシティ ecoプロジェクト」にて回収されたものです。

写真:筆者撮影

(※3)ポストコンシューマープラスチックとは、消費者が使用した後に廃棄された材料または製品のことです。
資源プラ協会ホームページより)

なぜ、このボールペンを取り上げたかといいますと、あるキャンペーン商品を筆者自身が購入したところ、記念品としてこのボールペンをいただいたことと、使い捨てコンタクトレンズを「アイシティ」で購入しており、空のケースは店舗に設置されている回収ボックスへ戻していたことが繋がったためです。

普段使っているコンタクトレンズの空ケースが形を変えて自分のもとに戻ってきた、そのようなことを想像すると、とても愛着が湧いてきます。ボールペンは、穏やかなやわらかいブルーの色合いで、手触りが良く、書き心地もとてもなめらかです。

このボールペンには「環境にやさしい」「廃棄物が資源になる」「循環して戻ってくる」といった解釈とストーリーがあります。

「ボールペン」としての使い道や機能は従来と変わりませんが、価値が再定義され、参加価値も加わり、商品の意味と関係性が再設計された商品に変わりました。

また、生活者個人が持っていた各ブランドに対する想いは、循環と繋がりによって愛着心が一層深まる効果があります。

まとめ 「どのような意味を持つ商品として届けるか」

3つの事例に共通しているのは、価値の源泉が「モノそのもの」ではなく、「意味づけ」や「文脈の設計」にある点です。
低利用魚を手軽な商品へと転換した「あごごま」、在庫品に新たな物語を与えたエディストリアルストア、そして生活者の参加によって愛着を生み出した再生ボールペン。

従来は価値が低く見られていたものに新しい視点とストーリーを与えることで、選ばれる理由を創出しています。

機能や価格だけで競うのではなく、「参加価値」「共感価値」を設計することで、顧客から選ばれ続ける理由を生み出す「どのような意味を持つ商品として届けるか」という視点が重要といえます。

日本マーケティング・リテラシー協会(JMLA)は、 「誤解されている価値」「お客さまが関わりたくなる空白」を「選ばれる意味」「売れる意味」に変えるマーケティングのご支援をしております。

■ ①価値の“再定義・再編集”の戦略設計をお手伝いいたします。
低利用資源・在庫・既存事業の棚卸し「なぜ価値が伝わっていないのか」の構造分解を行い、
価値転換や再定義の方向性設計から新しいコンセプト・意味づけの開発まで「価値の見立て直し」をサポートいたします。

■ ② “意味が刺さるかどうか”の検証と可視化のお手伝いをいたします。
「なぜ(お客さまは)それに価値を感じるのか」の、共感・納得・自分ごと化の心理構造を分解 し、ストーリー・カテゴリーの受容性検証や、響く層の特定、共感が生まれる言葉・表現の抽出を行います。 “機能”ではなく“意味が売れるか”をデータで判断するサポートをいたします。

■ ③ 価値転換・価値の再定義を“商品”として実現するお手伝いをいたします。
・未利用資源・在庫の活用アイデア創出
・新用途・新カテゴリー開発
・再編集・再定義型商品開発
・参加価値設計
“売れる商品の形”まで具現化するご支援をいたします。

お気軽にお問い合わせください。

また、上記を実現するための基本スキルを学べる資格講座も展開しております。
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女性の感性を活かした調査設計や市場動向の分析により、お客さまの深層心理「感性」の解明を得意とします。コンサルティングファームで食品メーカー、外食産業、エステティック産業、通販企業、冠婚葬祭業、工作機械メーカーなど幅広い業種のマーケティング・コンサルティング業務を経験しました。これまで培った経験を元に、一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会(JMLA)設立に参画し、感性マーケティング『マーケティング解析士』講座カリキュラム策定に携わりました。現在は、『マーケティング解析士』講座の講師活動を行っています。同時に、企業様のマーケティング課題解決のサポート活動を継続しています。