「これがいい!」という動機・目的をもって買い物する商品~感性マーケティング~
買い物をするときに、あまりにも情報が多すぎると買い物疲れし満足度が下がりますよね。
そういう買い物は大抵、動機や目的が定まらず曖昧な気持ちで買い物してしまったものではないでしょうか。
反対に、自分自身にとって意味のある買い物は、「わくわく!」する気持ちや「幸せ!」を感じることができると思います。
今回は、「”これ”がいい!」という動機・目的をもって買い物すると「楽しく幸せな」気持ちにしてくれるというお話をしながら、感性マーケティングを紐解いていきたいと思います。
目次
「“ここ”がいい!」という動機・目的をもって行くコンビニ
コンビニエンスストアを私は時々利用します。

- セブンイレブンへは、コーヒーを買いに行きます
- ローソンへは、スイーツを買いに行きます
- ミニストップへは、ソフトクリームを買いに行きます
コンビニエンスストアはどこでもいいではなく、目的買いで利用することが多くなってきました。
ファミリーマートのアパレル「コンビニエンスウェア」、ローソンの「まちかど厨房」、セブンイレブンのPB商品「セブンプレミアム」をはじめ、デリバリーサービスもあり、全国に55,855店舗(一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会 2025 年5 月20 日発表)もあるコンビニエンスストアも、いまや動機や目的をもって行くお店、利用するお店になっているのではないでしょうか?
「“これ”がいい!」という動機・目的をもって遊ぶモバイルゲーム
さて、ここからは、モバイルゲームも目的や動機をもって遊ぶという話に変わります。
有料のモバイルゲームを開発して提供しているあるゲーム会社さんの例で、ゲームユーザー(顧客)がなぜ自社のゲームで遊んでくれているのか?「動機・目的」の探索・発見から新規顧客獲得の動線構築につながったお話をします。
(ゲームの例は、事例をもとに一般化し編集した内容です。)
自社の有料ゲームで遊び始めてくれたゲームユーザーが、長く遊び続けてくれるよう、LTV(※)最大化を目指していました。
(※) LTV とは
LTVとは「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の略で、顧客生涯価値と訳されます。
顧客が、商品やサービスを使い始めた時から、使い終わるまでの間に、企業にもたらす利益の総額を指します。

LTV最大化に向け、満足感・習慣性・信頼感の向上を図る
LTV最大化を目指し、ユーザーに長く遊び続けてもらうために、満足感や習慣性、信頼感を上手に設計しました。
ゲームユーザーのログ解析に基づいて、満足感・習慣性・信頼感を向上させる施策には、下記のような施策例があります。
1.ゲーム体験の質を高める(満足感の向上)
◆ 継続的なコンテンツ追加
- 新キャラクター、新イベント、新ストーリーなど、飽きさせない仕組みを用意
- 「〇〇月限定のイベント」など、タイムリミット付き要素を用意
◆ バランスの取れた課金設計
- 課金すれば「明確な価値」が得られる設計
- チャレンジしたい、自分スタイルなど納得感のある課金理由を提示
◆ 快適なプレイ体験
- ロード時間の短縮、UI(※)の改善、クラッシュやバグ修正の早期対応など
- お金を払うに値するクオリティの担保
(※)UI(ユーザーインターフェース)とは
UIとは、プレイヤーがゲームを操作する際に目にする、画面のデザイン、ボタンの配置、操作方法など、ユーザーが直接触れたり見たりする接点要素すべてのことです。
2.継続する動機を設計(習慣性の向上)
◆ ログインボーナス+連続報酬
- 7日間・30日間など、定期継続にインセンティブを用意
- 特別ログインボーナスなども用意
◆ デイリー・ウィークリーミッション
- 毎日・毎週のプレイを促す習慣的ミッション
- 小さな報酬+時折大きな報酬で、射幸心と期待感を演出
◆ 協力モード、チーム対戦要素
- ソロだけでなく「仲間と一緒にプレイする」体験ができ、飽きにくくする
- 「仲間に迷惑をかけたくない」「みんなで頑張っている」心理から、ログイン・継続の動機が強化される
3.ユーザーとの信頼関係を構築(信頼感の向上)
◆ 運営の透明性と信頼性
- 不具合対応や仕様変更に関して、正直で誠実なアナウンス
- ユーザーの意見を吸い上げ、改善に反映することで「自分たちの声が届いている」と感じてもらう
◆ 課金のステージが上位のユーザーを特別扱い
VIP制度、限定スキン(アバター・演出)、先行アクセスなど優越感をくすぐる施策

では、新規顧客はどんな人?動機は何? 認知経路を探るアンケートを実施
LTV最大化に一定の成功を上げると、新規顧客へのケアが手薄になっていることに気づきました。
LTV向上策に集中していたため、一度利用してくれた後からの施策に比重が偏っていました。
ログデータがない潜在顧客の見つけ方は、すでに顧客になってくれているユーザーが、初めて自社のモバイルゲームで遊び始めてくれたきっかけを知る、認知経路を探る方法で、検討をつけることができます。
ログデータがない潜在顧客の認知経路を探る方法として、「アンケート」は有効な方法です。
すでに自社有料ゲームの顧客となったユーザーに対して「どのようにこのゲームを知ったか」「なぜ遊び始めたか」を尋ねることで、新規獲得のヒントを抽出できます。
アンケートが有効な理由とは
1.ログに現れない「認知経路」を知れる
たとえば以下のような情報は、ログでは取得できません。
- 友達から教えてもらった
- Twitterでバズっていた
- YouTubeの実況を見た
- アプリストアで「着せ替え」と検索した
2.動機・心理が定性的にわかる
- 「なぜ他のゲームではなく、これを選んだのか」
- 「最初に課金した理由」
- 「どんな期待を持って始めたのか」
などログではユーザーの内面の動機まではわかりませんが、アンケートなら深掘りできます。
認知→動機→継続の経路分析 定量データと定性データを掛け合わせて深く探る
ゴールは「継続」でスタートは「認知」と設定し、長く継続してくれているゲームユーザーが、最初は何で知ったのかを遡って明らかにしていきます。
アンケートの全体設計

●ピンク色の矢印の区間は、ログデータがとれていた区間です。
●グリーン色の矢印の区間は、ログデータがなかった区間です。
アンケートの具体的な設問設計
アンケート設計では、選択式の設問とフリーアンサー(自由記述)の設問を組み合わせて設計します。
経路の階層 | 設問の回答形式 | 設問の狙い |
【認知】 | 選択式の設問 | 何の情報を見て |
【関心】 | フリーアンサー式の設問 | 何に関心を持って |
【動機】 | フリーアンサー式の設問 | 何がきっかけで |
【利用】 | 選択式の設問 | 初めて有料ゲームで遊んだ |
【継続】 | 選択式の設問 | そして長く継続している |
回収したアンケートデータの分析
アンケートデータを、ISMという階層構造分析手法を用いて認知経路分析を行いました。
アンケートは、数百人レベルで量的に聴取しました。フリーアンサーは顧客の感性ですが、顧客の感性データも量的に分析しました。
ISM分析 Step1

上図の太い矢印は、1番回答割合が多かった流入経路です。
予想通り、もともとゲーム好きというコアなゲームユーザーでした。
これを1番の流入経路としましょう。
ISM分析 Step2

ところが、2番の流入経路(上図)はそうではなかったのです。
2番の流入経路(上図)は、ゲームを全くしたことがなかった人が、無料ゲームなら遊べそうと興味を持って始めたことをきっかけに、自社のゲームと出会って初めて自社のゲームで有料で遊び、そして今でも遊び続けてくれているユーザーの経路で、一定数のボリュームがあることが判りました。
Step2で把握できた経路、ゲームユーザーが、なぜ有料で遊び始めてくれたのか、その理由・動機が「ゲームのフォルムが好き」でした。
「ゲームのフォルムが好き」とは、フリーアンサー(アンケートの自由記述)の内容から、下記のとおり具体的に把握できました。
「ゲームのフォルムが好き」とは
1.ビジュアル・グラフィック面が好み
色使い、アニメーション、フォントなどの雰囲気
2.ゲームの“形”や“構成”が自分に合っている
メニュー構成、レイアウト、操作性のフィット感
3.ゲーム性の抽象的な“かたち”としての好み
ルールや進行のテンポ感が好き
というように、「フォルム」は、形状、輪郭、造形、見た目、印象、様式美の複合的な印象を意味していました。
「暇つぶしにゲームでもするか」ではない「このゲームで遊びたい」
「暇つぶし」ではなく「このゲームをしたい」という動機と目的を持って遊ぶゲームは、ユーザーの余暇時間を有意義なものにする存在価値の高いゲームであり、「納得してお金を払う → 長く遊び続ける」好循環を生み出します。
「暇つぶしゲーム」と「このゲームをしたい!という動機をもったゲーム」の比較
比較点 | 暇つぶしゲーム | 動機をもったゲーム |
遊ぶ理由の違い | なんとなく・退屈対策 | 「このゲームじゃなきゃ」 |
課金意識の違い | 無料でOK | 納得して払う、 対価としての価値を感じる |
継続率の違い | 離脱もはやい | ログインが習慣になる |
心理状態の違い | 受け身 | 主体的、目標意識がある |
推薦意欲の違い | 弱い(思い入れ無し) | 強い(このゲームはいい!) |
まとめ 「この商品・ブランドだから買う」という「動機・目的」を顧客がもつために
冒頭のコンビニエンスストアの話や事例のゲームのように、コンビニならどこでも同じでしょ、ゲームならなんでもいい、ではなく、あのコンビニに〇〇を買いに行く、自分時間を有意義に過ごすためにこのゲームをする、というように、顧客が目的をもって買い物する商品は、3つのメリットがあります。
- 何度も利用してくれる
- 長く利用してくれる
- 人におススメしてくれる
商品やブランドに対する、顧客の利用「動機・目的」を見つけるために、アンケートはとても有用です。
その理由は、「動機・目的」は、人の感性と密接に関わるためです。
人の感性を深掘りする方法は、取り組みやすい方法は、選択式設問とフリーアンサー式設問を上手に設計してアンケートを行う方法です。さらに深く聴く必要がある点に絞って、対面形式の一対一のインタビュー(デプスインタビュー)を行うこともあります。
JMLA(日本マーケティング・リテラシー協会)は、量的調査で人の感性を分析することが得意です。
アンケートで100人、500人という規模の定性情報(言葉の情報)を量的に分析し、顧客の「動機・目的」を定義することが可能です。
アンケートによる感性分析ならJMLA(日本マーケティング・リテラシー協会)お任せください。
顧客の感性を分析し「もっと売れる!」を実現する感性マーケティング
感性マーケティングは、企業側(つくり手)の思いだけではなく、顧客側(使い手)の価値観を理解する、共に創る「共創」という考え方が欠かせません。「共創」という考え方を実践すると「付加価値」が高まります。その「付加価値」が「経済価値」を生み出します。
<感性が経済価値を生む>

一人一人違う顧客の感性を理解しながら適切に対応することにより、「もっと売れる!」を実現することが出来ます。商売繁盛をもたらすものが『感性マーケティング』です。
具体的には、「声」から深層心理を分析し、分析結果をマーケティング戦略立案や事業目標達成に有効活用します。
「声」には、顧客や消費者、社員、事業のリーザ―、経営者など様々ありますが、目的に沿って必要な「声」という感性データ(定性データ)を収集し分析します。目的に沿ってどのような「声」を収集するかという最初の設計がとても重要です。
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堀内香枝

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