同じモノなのに、なぜ選ばれる商品と選ばれない商品があるのか? ―「感性・機能・価格」から考える商品価値
商品を企画するとき、私たちは機能や品質、価格を比較し、競合商品との差別化を考えます。
しかし、機能も価格も大きく変わらないのに、よく売れる商品もあれば、なかなか選ばれない商品もあります。その違いは、どこにあるのでしょうか。
今回は「感性・機能・価格」という視点から、顧客が感じる商品価値について考えてみます。
同じモノでも、感じ方が違うのはなぜか?
たとえば、同じような機能を持ち、価格も大きく変わらない商品があったとします。
それでも、ある商品は「使いやすそう」「心地よさそう」「自分に合っている」と感じられ、別の商品はそれほど魅力的に感じられないことがあります。
その違いを生むのは、機能や価格だけではありません。
- 見た目:美しい、上質そう、かわいい
- 感覚:触り心地がよい、音が心地よい、香りが好き
- 意味:自分らしい、こだわりを感じる、共感できる
- 文脈:使う場面に合っている、贈る相手にふさわしい
- 経験や記憶:懐かしい、安心する、以前のよい体験を思い出す
こうした要素も、商品を評価するときの判断材料になります。
時計を例に挙げると、同じように時刻を確認できる時計でも、正確さや価格を重視する人もいれば、デザインやブランドの物語、身につけたときの気分を重視する人もいます。

つまり、商品が持つ機能と、顧客がその商品に感じる価値は、必ずしも同じではないのです。
「機能」と「感性」の違い
この「同じモノでも、感じ方が違う」は感覚的な話ではなく、商品評価における「機能」と「感性」の違いは、研究対象になっています。
2015年に発表された自動車に関する研究では、1,200人を対象に調査し、車体色や内装色、におい、触感、音などの感覚的な要素を研究しています。

また、商品評価を分析した研究では、性能や大きさなどの物理的特性に関わる「機能評価」と、「美しい」「おいしい」といった印象に関わる「感性評価」を区別しています。
つまり、感性による価値は、単なる曖昧な印象ではなく、調査や分析を通じて捉えようとできるものなのです。
ただし、すべての商品で感性が機能や価格より重要だという意味ではありません。
何を重視するかは、商品カテゴリーや利用目的、個人の価値観によって変わります。
「感性」「機能」「価格」をあえて分けてみると 重視されやすい商品
商品を企画するうえで、【A】【B】【C】は、とても重要な整理です。
【A】「感性」が機能や価格より重要視されやすい商品
【B】「機能」が感性や価格より重要視されやすい商品
【C】「価格」が感性や機能より重要視されやすい商品
まず前提として、「感性」「機能」「価格」のどれが重視されるかは、商品カテゴリーだけでなく、購入目的や使用状況、購入者によっても変わります。
上記【A】~【C】に分類した商品傾向について、次項から3項つづけてそれぞれ見ていきましょう。
ただし、【A】~【C】の分類は絶対的な分類ではなく、商品企画やマーケティング戦略を考えるための傾向として捉えてください。
【A】「感性」が機能や価格より重要視されやすい商品
感性が機能や価格より重要視されやすい商品は、購入者が「どんな気持ちになるか」「自分にとってどんな意味があるか」を重視しやすい商品です。
① ファッション・バッグ・アクセサリー
重視されやすい価値:
デザイン、ブランドイメージ、自分らしさ、憧れ、所有する満足感。収納力や耐久性も重要ですが、それだけでは購入の決め手にならないことがあります。

② 香水・化粧品・フレグランス
重視されやすい価値:
香りの好み、使用時の気分、自分のイメージ、パッケージの美しさ。効果や価格に加え、「この香りが好き」「このブランドを使いたい」という感情が選択に影響します。

③ カフェ・スイーツ・嗜好品
重視されやすい価値:
味や香り、見た目、特別感、過ごす時間、誰かと共有する楽しさ。空腹を満たすだけなら安価な選択肢もありますが、楽しみや体験を求めると選び方が変わります。

④ インテリア・食器・雑貨
重視されやすい価値:
空間との調和、素材感、デザイン、暮らしの世界観。収納や使いやすさだけでなく、「部屋に置いたときに心地よいか」が購入理由になります。

感性価値が選ばれる理由になりやすい商品のマーケティング上のポイントは、スペックや値引きだけで差別化しようとすると、競争が価格に偏る可能性があります。デザイン、利用体験、ブランドの意味などを含めた価値設計が重要です。
【B】「機能」が感性や価格より重要視されやすい商品
感性や価格より、機能の方が重要視されやすい商品は、「目的を確実に達成できるか」「安全に使えるか」「必要な性能を満たすか」が重視されやすい商品です。
① 防災・安全関連用品(消火器、防災用ヘルメット、避難器具など)
重視されやすい価値:
安全性、信頼性、性能、使いやすさ。いざというときに機能しなければ意味がないため、見た目の好みより、必要な安全性能や信頼性が優先されやすい商品です。

② 産業用機器・業務用設備(工場のポンプ、業務用冷凍設備、製造装置など)
重視されやすい価値:
処理能力、精度、耐久性、稼働率、保守性。導入によってどれだけ生産性や業務効率が改善するかが、重要な判断材料になります。

③ 業務用ITインフラ・専門機器(サーバー、ネットワーク機器、業務用計測器など)
重視されやすい価値:
処理能力、正確性、安定稼働、互換性、セキュリティ。外観の魅力よりも、業務上の要件を満たせるかどうかが選定の中心になりやすい商品です。

④ 測定・検査機器(温度計、測定器、検査装置など)
重視されやすい価値:
測定精度、再現性、信頼性、操作性。正確な結果を得ることが購入目的であれば、感性的な魅力よりも性能要件が優先されやすくなります。

マーケティング上のポイントは、機能が重視される商品でも、価格が無関係になるわけではありません。必要な性能を満たす商品同士を比較する段階では、価格や保守費用が決め手になることもあります。また、操作画面の分かりやすさや使うときの安心感も、選択に影響します。
【C】「価格」が感性や機能より重要視されやすい商品
感性や機能より、「価格」の方が重要視されやすい商品は、購入者が「必要なものを、できるだけ安く手に入れたい」と考えやすい商品や購買状況にあることです。
① 日常的な消耗品(ゴミ袋、キッチンペーパー、トイレットペーパーなど)
重視されやすい価値:
価格、容量、必要最低限の品質。商品間の違いを感じにくく、どれを買っても目的を果たせると考える場合、価格や内容量が比較の中心になりやすいです。

➁差別化を感じにくい定番商品(一般的なミネラルウォーター、砂糖、塩など)
重視されやすい価値:
価格、容量、入手しやすさ。味や産地、ブランドなどに特別なこだわりがなければ、安さや買いやすさが選択を左右しやすくなります。

③基本的な機能で十分な文房具(一般的なボールペン、付箋、クリップなど)
重視されやすい価値:
価格、必要な機能、数量。書き心地やデザインにこだわりがなければ、低価格の商品やまとめ買いが選ばれやすくなります。

④ベーシックな衣料品(無地の靴下、インナー、日常用の肌着など)
重視されやすい価値:
価格、必要な品質、枚数。特定のブランドやデザインへのこだわりがなければ、価格やセット販売のお得さが選択に影響します。

マーケティング上のポイントは、価格が重視される商品でも、単に安くすればよいとは限りません。「大容量でお得」「長持ちする」「買い置きできる」「失敗しにくい」といった価値の伝え方によって、選ばれる理由をつくれます。
まとめ
この3分類は、商品を固定的に分類するためのものではありません。
同じ商品でも、誰が、何のために、どのような状況で買うかによって、重視する価値は変わるからです。
たとえば、同じ水でも、
- 災害への備えとして買う人は、保存性や備蓄のしやすさを重視する。
- 毎日飲むために買う人は、価格や容量を重視する。
- 特別な食事に合わせて買う人は、味や産地、ブランドの背景を重視する。
という違いが考えられます。
「どのような人が、どのような状況で、何を価値と感じて選んでいるのか」
ここに、アンケートの選択式回答だけでは把握しにくい部分があります。
「価格が重要」と回答した人でも、自由回答を読むと「安ければ何でもよい」のか、「品質に納得できる範囲で安いものがよい」のか、「家計を管理する自分にとって合理的な選択をしたい」のかで、意味が異なるからです。
この違いを読み解くことが、商品企画や売上をつくる意思決定に役立つ感性マーケティングの重要な役割です。
そのための学びの場として、JMLA(日本マーケティング・リテラシー協会)では、「感性を読み解く力」をより高める資格講座と、その基盤となる「基本知識」を学ぶ資格講座をご用意しています。
関心をお持ちの方は続けて下記もお読みください。
1.戦略的マーケティングの基本を体系的に学ぶ →JMLAベーシックパスポート
2.データだけでは捉えにくい顧客の感性を分析する → JMLAマーケティング解析士プロフェッショナル 感性
1. 戦略的マーケティングの基本を体系的に学ぶ
「JMLAベーシックパスポート」は、マーケティング戦略の基礎理論を使いこなせるようになる資格講座です。
2. データだけでは捉えにくい顧客の感性を分析する
「JMLAマーケティング解析士プロフェッショナル 感性」は、お客様の声から売り伸ばし戦略を立案できるスキルを習得する資格講座です。
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また、商品企画に特化した資格講座も開催しております。
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スキルアップを目指す方は、3コースの中からご自身が目指すスキルアップに合わせてご選択いただけます。
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- 顧客起点のリサーチに取り組みたい
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- 商品企画Neo P7/P7に沿ったアンケートに取り組みたい
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に関するご相談は、JMLA(日本マーケティング・リテラシー協会)にお任せください。
JMLA 事務局
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